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瀬戸音信

                                        暮らしの中の東洋医学
                                    人・物・情報の交差する島々の物語
                                        上五島の歴史と文化・風土
                   (原典:『創立10周年記念誌 上五島の歴史と風土』より)






薬食同源





病のもとは五臓の乱れ





【平成二十三年十月二十二日】

           暮らしの中の東洋医学

                    山中國暉

◎講師紹介 上五島薬業会会長(元長崎大学薬学部講師)

◎配布資料 「暮らしの中の東洋医学」「薬草あれこれ」「長崎県の薬草」「薬食同源」「シベリア人参」

◎講話内容要旨(配布資料他より)

○はじめに

 中国における生薬学は本草(本草学)として発達してきたが、漢方医学と切り離しては考えられない。

 黄河文明圏は、気候変化の激しい草原地帯で、天然医薬原料はあまり豊かではない。冬は勿論、夏にも夜間は気温が下がるため、手足など露出した部分に刺激を与える鍼灸療法が発達した。

 この療法の原典は黄帝内経で、その成立の正確な年代は未詳であるが、漢の武帝(紀元前一四一〜八七)の頃とされている。本書は、素問(人体の生理、病理)、霊柩(鍼灸術、解剖)から成り、宇宙の根元を気とし、陰陽五行説を基に考察し、気のバランスのくずれを病気としている。この本は、不老不死を追求した中国最古の基礎医学書といわれている。

 後漢の時代(二五〜二二〇)には、生薬に関する知識を集積した薬物書、神農本草経がまとめられている。この本は、中国最古の本草書とされているが、その原文は今日に伝わっていない。五〇〇年頃、梁の陶弘景(四五二〜五三六)が当時伝わっていた諸本草書を整理し、定本を作ることを志して、「神農本草経」四巻を中核とし、これに、魏、晋(二二〇〜四二〇)以来の名医の治病歴を収録した「名医別録」と自注を加えて、「神農本草経集注七巻」を著した。これは本草書の祖本ともいうべきものである。

 中国の江南文化圏は地味も肥え、草木も豊かであるが、高温多湿で、熱性疾患、流行病が発生しやすい地域である。後漢の頃(二〇〇)、一種の熱病で多くの親類縁者を亡くした張仲景が、各地の処方を集めて検討し、実践的な「傷寒雑病論」十六巻を編著した。

 これは漢方医学の湯液の分野において最古の文献とされているが、後に「傷寒論」(急性熱病、伝染病の治療法)と「金匱要略」(慢性雑病の治療法)の二著に分けられた。

 中世以降、李朱医学が盛んになって、傷寒論医学の価値はしばらく忘れ去られていたが、明代の李時珍の「本草綱目」により再発見された。そして、日本では江戸初期(一六六〇)に見直され、現代では、漢方医学界の多数派となっている。

○五行説

 繰方表(高島易学研究所発行)で自分の満年齢の欄を探し、左側をみると九紫火星、八白土星、七赤金星、六白金星、五黄土星、四緑木星、三碧木星、二黒土星、一白水星が書かれている。

 自分がどの五行(木火土金水)の年に生まれたか確認した後、五運行大論の図を見てみる。この五運行大論の図は、自然界の万物を五行理論によって分類し、それらの相関関係を示している。つまり、東方からは風が起こり、風は木を育て、木は酸味を生む。そして、この酸味は五臓のうち肝へ走りやすく、その肝は筋(肉)を生むということになる。また、一方で肝は、心に連続して関連し、心は順に脾、肺、腎へと関連していく。

 五行説とは、古人が五種類の物質(木、火、土、金、水)を用いて、物事の性質を分類し、五種類の相互資生や相互制約の関係と運動変化を述べた説であり、五行説は、つまりこの五つの物質の存在とこれらの関係性(相生(そうじょう)と相克(そうこく))を説明した思想である。相生関係を解りやすく例えれば「木が燃えれば火を生じ、火が尽きれば灰、つまり土を生じ、土の中からは金属を生じ、金属の表面には水を生じ、水は木を成長させる」という関係、 相剋関係とは、「木は土の中より養分を奪って育ち、土は水を吸収して貯め、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属は木を割り砕く」という循環関係である。

 臓腑を五行理論にしたがって分類すると、木火土金水に応じて、臓は肝、心、脾、肺、腎、腑は胆、小腸、胃、大腸、膀胱となる。

 五行には、前述したように相生と相剋の関係がある。

 たとえば、胆は心を生む…というように、順に時計回りの方向に関係するのを臓の相生関係といい、肺は肝に剋つ…というように、円内の矢印の方向に関係するのを相剋関係という。

 これは家族関係などにも言える。木星と火星の相性はいいが、木星と土星の相性は悪い。しかし、相性の悪い家族が居ても必ずその間の火星の家族か親戚が不思議といるものである。それで円満にいくようになっている。

 また、占いもこれから発生したものが少なくない。

 五行は顔の中にもある。

 肝は目、腎は耳、心は舌、脾は唇、肺は鼻にあらわれる。土と金の関係を臓器で言うと脾臓と肺となるが、土の腑である胃を整えれば呼吸機能(肺)が改善される。金の腑である大腸におこる宿便の状態は鼻にあらわれる。

 五行の関係は内臓にも表れる。

 これらを図解すると、次に掲げる各図のようになる。

 

○肝について

 肝は人体における血液の貯蔵、血流量の調節、四肢の関節や筋の運動、神経、視覚系の機能などと密接な関係があり、経絡は生殖器、両脇、乳房、眼、耳、頭頂を循行している。

 肝の機能は、@肝は血を蔵す。A疏泄を主る。B筋を主

る。C眼に開窮し、華は爪にある。

○心について

 心は、心臓の拍動にもとづいて循環機能と大脳を主とする神経系の機能をさす。

 心の機能は、@心は血脈を主る。A心は神を主る。B心は舌に開窮し、その華は面にあり、汗を主る。

○脾について

 脾とは、胃、十二指腸、小腸、膵臓などの消化器全般の機能面をさす。

 脾の機能は、@脾は運化を主る。A脾は統血する。B脾は肌肉四肢を主る。C脾は口に開窮する。中気とは脾と胃の機能を含めた消化吸収機能全般のこと。

○肺について

 肺とは呼吸機能、体液代謝の一部、体温調節、免疫能の一部などを含めた機能系をさす。

 肺の機能は、@肺は気を主る。A宣散と粛降を主り、水道を通調する。B皮毛を主り、鼻に開窮する。

○腎について

 水を司る。骨の老化、髪質にも腎の状況があらわれる。最近、テレビの宣伝でも流れているが、女は七の倍数、男は8の倍数の年に節目を迎える。

○臓と臓の相互関係について

@心と肺 心は血脈を主り、肺は気を主る。

A心と脾 心は血脈を主り、脾は運化を主り統血する。

B心と肝 心は血脈を主り、肝は血を蔵す。心は神を主り、肝は疏泄を主る。

C心と腎 心は神を主り、腎は精を蔵し、髄を生ず。心は血脈を主り、腎は水液を主る。

D肺と脾 肺は気を主り宣散、粛降を主る。

E肺と肝 肺は宣散、粛降を主り、肝は疏泄を主る。F肺と腎 肺は気を主り、腎は納気を主る。腎は水を主り、肺は水道を通調する。

G脾と肝 脾は統血し、肝は血を蔵す。脾は運化を主り、肺は水道を通調する。

H脾と腎 脾は後天の本、腎は先天の本である。

I肝と腎 肝は血を蔵し、腎は精を蔵す。

○薬草について

「サフラン」の薬効は、@血の道、冷え性、めまい、A通経、帯下、B産後の貧血、頭痛、C健冒、D感冒、に効く。

 服用法はサフランを一回量〇・三〜〇・五g取り、熱湯を注ぎ、振り出しする。

 このほか、配布資料の「長崎県の薬草」に基いて、「アカメガシワ」「グミ」「アジサイ」「アマチャズル」「イタドリ」「イヌタデ」「ウツボグサ」「ウラジロガシ」「エビスグサ」「オオバコ」「オナモミ」等々、解説を交えて紹介されたが、詳細は省略。

 なお、町内には漢方の薬として使用できる植物がたくさんあるとのこと。  (編集担当 大山かおり)